そらとぶへび

仕事・プライベートを通しての気づき、JavaやPHP、データベースやサーバの話などこつこつと書いていきます

一番厳しい人が、一番やさしい人だった

とあるプロジェクトにアサインされて4年の間、クライアントに毎日のように叱られていた時期があった。
月次会議の数日前からかなりのプレッシャーを感じながら仕事をしていた。確認モレのないよう重ねに重ねて見直しをしても、痛烈な指摘を食らう。

指摘される日々

やり方に無駄がある、対応の優先順がおかしい。原因究明の不足。ところどころを的確に詰められる。当時、PMOという複数プロジェクトを取りまとめるチームの一員として働いていた。数あるプロジェクト、部署、ベンダー、それぞれのシステム一つ一つにどのような業務があって、どう影響し合うのか、整理しきれずにいた。

クライアント組織の全システム案件が間断なく流れ込んでくるので、考える時間的な余裕はない。瞬時に優先度や連携先、共有先を判断して最善と思える体制を組み立てる。1件1件と、ひたすら数をこなす中に、重い案件が混ざっているにもかかわらず表面的に判断してしまい本来の原因を把握しきれずに、調整ミスが発生する。問題発生時の原因究明中も、別の案件対応を迫られるので、十分な調査・整理時間を確保できない。その結果、「ただこなしているからそうなる」「利用者のことを考えていない」と散々に指摘される。クライアントの指摘は筋は通っているため、言い返す余地がない。毎日間断なく案件が降ってきては忙殺され、毎月のように辛い思いをした会議だった。

吹っ切れたきっかけ

何度も心が折れそうになったが、それでも心が折れずにやってこれた要因は、痛烈な指摘の中に自分個人への攻撃は一切なかったことだと思う。問題はやり方にあるだけなんだ。そこに気がついてからは、なにがあっても吹っ切れるようになった。毎月烈火の如く叱られるのを恐れず、何度もトライできるようになった。徐々に仕事のパフォーマンスは上がってきて、以前より増えているにもかかわらず、案件を素早く的確に捌けるようになってきた。1年くらいした頃には、重要な案件や問題の兆しがありそうな案件など何かある度に事前に知らせをくれるようになった。本来の業務ではないにもかかわらず。おかげでよりパフォーマンスを発揮できるようになった。結果として組織全体が素早く動けるように対応することができるようになった。

徐々に、信頼を築くことを実感できた。それでもたまに油断すると以前のように烈火のごとく叱られることはあったが、理解のある指摘は気持ちがいい。ただただ辛かった月次会議も、いつしか会議の緊張感が楽しみになってくる。プロジェクトとしての期間を終え、クライアント組織を去るころ、その方は定年を過ぎて嘱託になっていた。挨拶に伺った時、今までにあった誰よりもやさしく朗らかで暖かかな態度で迎えて頂いたのが印象的だった。「誰かがいわなきゃいけない、そんなときに真っ先に指摘をする」自らの役目に徹底した人だった。

一番厳しい人が、一番やさしい人だった

今思えば、相手のことを一番考えていたのはその厳しい指摘をくれるクライアントの方だったかもしれない。どこまでも厳しく、それでいて人を叱る際に個人への攻撃は一切しない。今までで一番しんどい思いをした時期でもありながら、一番感謝を感じた時期でもあった。

こういった方に、これから何人出会えるだろう。